535 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 21:15:25 ID:M2ATYmtw
えーと読んでくれる人がいるか分からないけど投下します
結構長いんで分割します
今日は5レスのみ

稟×ネリネもの
違和感があるかもです
536 名前:あなたとならどこまでも.1[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 21:16:42 ID:M2ATYmtw
「ウィー……ラァ……ウィー……ウレェロ……ウェレ……」

とある屋敷のとある地下室の入り口。くぐもった声が地下に通じる螺旋階段から微かに響いていた。
階段には無数の蝋燭が掲げられていて、さながら冥界へ続く階段の様相を醸し出していた。
その階段を潜り抜けた先の大きなテーブル、その上の幾つかの書物と複数のフラスコ等の実験器具。
そのテーブルの向こうに黒い装束に身を包んだ人物が、魔術書を片手に先程の呪文の様なものを唱え続けていた。
「はぁ……なかなか上手くいかないものですね」
ポソリと一言、苦言を洩らすとその人物は深く被ったフードを上げて蒼く長い髪を引き出した。
蝋燭に照らされたその深紅の瞳は狼狽の色を隠せずに、しかしながらどこか決意の色を覗かせている。
最早、言うまでもないと思うが、その人物は「魔王フォーベシィの一人娘」「魔界のプリンセス」「天使の鐘」……まあ、早い話がネリネその人である。

ここは人間界、光陽町にある魔王邸の地下修練室。要は魔法の練習場である。
この部屋はもともとフォーベシィがネリネの為に作った練習場だが、
「いやねぇ、ネリネちゃんの魔力に耐えうる部屋を作ろうとしたんだけど設計上地下になっちゃったんだよ」
というわけらしい。
が、薄暗い雰囲気がネリネ自身好きでは無いため、なかば、倉庫のような扱いになっていた。
そんな地下室でネリネが何をしているのかと言うと……

事の起こりは数日前まで遡る────

「はぁ……」
小さな公園の小さなブランコがキィキィと微かに音を立てる。
それに小柄な少女が一人酷く落胆した顔で座っていた。
いつもなら辺りの雰囲気すら幻想的に変えてしまいそうな歌声が聴こえてくるのだろうが、
今日は遠くを走る車の音だけが虚しく響いていた。
「あれ、ネリネちゃんじゃない。どうしたの?」
不意に公園のフェンス越しにネリネに話し掛ける声が聴こえる。
「亜沙先輩? カレハ先輩まで」
「こんにちわ、ですわ♪」
二人はスタスタとフェンスを回るとブランコに座ったままのネリネの目の前で足を止めた。
「一人なんて珍しいわね〜? 今日は稟ちゃん一緒じゃないの?」
「……今日は、稟さまは用事があるらしいので」
「まぁ、そうでしたの。……?」
違和感。確かにカレハと亜沙はそれを感じた。
普段のネリネならもう少し明るく受け答えしてくれそうなのに、今日の彼女にはそれが全く無かった。
いや、寧ろ何か悩みを抱えているような雰囲気だ。
「あれ、ボク……何かいけないこと言っちゃった……?」
「いえ……別にそんな事は」
537 名前:あなたとならどこまでも.2[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 21:17:46 ID:M2ATYmtw
「でも、その割りには元気なさそうだけど?」
「……」
亜沙の言葉に何も答えずにネリネは俯いてしまう。
よほど話しづらい悩みなのだろう。
「んー、無理にとは言わないけどボクやカレハで良ければ相談に乗るけど」
カシャッっと隣のブランコに腰掛けながらブランコを揺らす。
「そうですわ、私達もネリネさんや稟さんの先輩ですから♪」
「ちょ、ちょっと押さないでよカレハ」
亜沙の後ろに回ったカレハがトーン、トーンと亜沙の背中をタイミング良く押し返していた。

二人の気遣い。
全然気にしてないフリをしながらもネリネの事を心配して打ち明けてくれるのを待ってくれている。
それを二人は知ってか知らずか自然に自分にしてくれている。
その事に気付いたネリネは、この悩みを打ち明けてみよう──そんな気分になっていた。

「……お二人にこんな話をするのは失礼かもしれないんですが……」
「ん?」
カレハがブランコを揺らすのをやめる。暫くの空白。
そして
「……稟様が…その………」
一言一言、ポツポツと
「……その……よ、夜の……」
「夜?」
「夜のお相手をしてくださらないんです…」
長い耳の先まで真っ赤にしながら、思いもしない悩みを打ち明けた。
「……」
余りに突拍子もない言葉に亜沙もカレハも面食らったらしく、ポカンとした表情のまま固まっていた。

ズルリ
「あいたっ」
「まぁ、大丈夫ですか、亜沙ちゃん?」
亜沙は気が抜けたのか、ブランコに深めに座りすぎていたらしく後ろにドタッと尻もちをついていた。
「へ、平気平気……。まさかそんな悩みだとは思ってもみなくて」
「す、すみません、急にこんなこと聞いてしまって」

詳しく話を聞いてみると稟と付き合いだしてから何回か体を重ねる事はあったのだが
それでも数える程しかなく、それどころかここ最近ではそういう時は自分を避けているように感じると言うのだ。

「私、嫌われてしまったんでしょうか……」
「うーん、稟ちゃんが避けてる、ねぇ。 とてもそうは見えないけど」
普段の二人からはとても想像が出来ない。
登下校を共にして、休み時間は一緒に行動して、四六時中イチャイチャオーラを出しているイメージしか亜沙には無かった。
いや、寧ろ誰が見てもそうだったろう。
「……私ってそんなに魅力無かったんでしょうか」
「そ、そんなことないわよ。というか……」
「ネリネさんに魅力無いなんて言ったら……三世界中の方々が困ってしまいますわ」
ネリネの容姿は低身長で可愛らしく、それでいて胸が大きい。
それだけでも反則なのに顔も可愛くて、そのバランスを整えるようにスタイルがいい。
538 名前:あなたとならどこまでも.3[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 21:19:34 ID:M2ATYmtw
そんな、自分が女性でも魅力を感じる人物が「魅力が無い」なんて口にすると
「何て言うか贅沢な悩みよねー……」
ジト目でネリネを見詰める亜沙。当然ながらこんな反応が返ってくるものだ。
「そ、そうなんでしょうか?……でも、どうしていいのか分からなくて…」
他人が聞けば大したこと無さそうな悩み。
しかし、恋愛経験の少ない人間にとっては分からない悩みだった。
勿論、ネリネだけではない。亜沙、カレハにとってもだ。
「うーん……多分リンちゃんじゃなくて稟ちゃんの問題だからね……」
「難しいところですわね……」
三人とも難しい面持ちをしながら考えてみるものも、やはり答えが出る筈もない。
しかも、こういう答えの出ない問いを考えているとおかしな所に着地してしまうのが人の常。
「……じゃあ、ネリネちゃんが稟ちゃんを襲っちゃうってのはどう?」
「えぇぇ!? わ、わ、私が稟様を…ですか?」
「まぁ♪亜沙ちゃんったら大胆発言ですわ♪」
亜沙にとっては雰囲気を和ませる為の軽い冗談のつもりだった。
亜沙はネリネにそんな大胆な事が出来る筈が無いと踏んでいたからだ。
「これはあくまで一例♪ 稟ちゃんにお薬を飲ませてあーんな事やこーんな事をしたいなんて別プランも!」
まあ、こんな話には速攻で飛び付いてしまう人物がいる訳で。
「まままぁ♪亜沙ちゃんは稟さんにそんな事を♪」
「ストップ! カレハ、ボクじゃなくてリンちゃんの話だから!」
しかし時既に遅し、そんな制止も空振り、空を切る。
「まぁ、亜沙ちゃんったら…三人でなんてそんな……まままぁ〜♪」
「え゙、ちょっとカレハ?」
カレハの何時もの悪い癖──。
こうなったカレハは暫く止まる事が無い。
カレハの暴走、いや妄想…、否、『創造』の域に達した想像力は止まる事を知らないからだ。
「あの、亜沙先輩…もしかして…?」
「うん…、スイッチ…入っちゃったみたい……。しょうがないわね」
最早打つ手無しと感じた亜沙はカレハを公園の入り口側に押しやって、くるりと振り返った。
「ごめんね、なんかこれ以上話し続けるとややこしくなりそうだからこの辺りで。それじゃ!」
「え、あ……はい」
亜沙は両手を顔の前で合わせてすまなそうにネリネに断ると、グイグイとカレハを押してどこかに行ってしまった。
その後ろ姿を呆然としながら見送った後に、ネリネは気付いた。
「うぅ〜、結局何も解決していません……」
話し損、という訳でも無いのだろうけどもっと電撃的な名案でも出るんじゃないかと少なからず期待していたのかもしれない。
ネリネは肩を落としてトボトボと帰路に着くしか無かった。
539 名前:あなたとならどこまでも.4[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 21:20:50 ID:M2ATYmtw

「……じゃあ…ネリネちゃんが稟ちゃんを襲っちゃうってのはどう?」


ネリネも全く考えなかった訳ではない。
自分はこういった強気な女性の行動は出来ない、という考えから一番最初に対象から除外されていたのだ。
それに、もし自分がそんな行動を取ったとすれば稟に軽蔑されるかもしれない、という恐怖心が根底にあった。

でも、本当にどうしたら……シアちゃんや楓さんに相談する訳にもいかないですし……あとは……

ネリネは候補を二人ほど考え付いたがブンブンと首を振ってそれを打ち消した。
一人は恐らく打開する術を知っていそうだがややこしくしてしまいそうな人物。
もう一人も相談するのは少し気恥ずかしいし、「美味しいワインを一緒に飲んで〜」なんて答えが返ってきそうだった。
溜め息をつきながらフラりと自室のテーブルに手を乗せると、勉学の為に地下室から取り出した数冊の魔導書が目に入ってきた。

「ああ、そういえばそろそろこれも片付けないといけませんね」

ネリネはパタパタと本を纏めると地下の倉庫に本を直しに向かうのだった。

……

魔王邸の地下修練場、という名の倉庫にはかなりの量の魔導書が揃えられている。
と言ってもここにある書物の殆んどはフォーベシイの頭に入っているらしい。
なのでフォーベシイ自身がこの倉庫を利用することはまず無い。
彼が入るとすれば恐らく大掃除くらいのものだろう。

「ええと、これは確かここで……これはこっちの……きゃあ!?」
ネリネが本を納めているとバサバサと音を立てて本棚の一部が崩れ出した。

「……もうっ」

押し込んだ弾みで反対側から押し出されてしまった本を一冊一冊元に戻す途中、ふとページを捲ってみる。
「なんの本なんでしょうか……?」
開かれたページには前時代の魔界言語らしき文字と何にかの精製手引きが細かく書かれていた。
「ええと、い……異性、ゆ、ゆう……わ…………!!!」
途端にネリネの顔が真っ赤に染まる。
それもその筈、一言で言えばそれは媚薬の作り方の手引き書だったのだ。
何やらイケない物を見たような気になったネリネはパタリと本を閉じてそそくさと元の位置に

『稟ちゃんにお薬を飲ませてあーんな事やこーんな事をしたいなんて別プランも!』

戻すところで誰かさんの声が聴こえた。

540 名前:あなたとならどこまでも.5[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 21:21:41 ID:M2ATYmtw



「おい稟、何かあったのかい?」
「別に何も。ていうか何の話だ、樹」
放課後、ゴミ捨てを終わらせた稟の元に悪友の緑葉樹が詰め寄ってきた。
大抵はナンパの話や補習をサボる口実などの話をしてくるのだが、今回はいささか違うようだ。
「何の話だ、じゃないよ!リンちゃんの話だよ!」
「……ネリネの?」
「今の微妙な間はやっぱり怪しいね」
こういう些細な変化も見逃さないのがこの緑葉樹という男である。
「最近リンちゃんの様子がおかしいんだ。プラス今確信したけど稟の様子もね」
よく気が付くやつだ、稟は少し感心しながらゴミ箱を元の位置に戻した。
「別に稟がおかしいのはよくある事だしどうでも良いんだけど」
「おい、ちょっとまて」
樹は稟のツッコミを無視して言葉を続ける。
「流石にバーベナ学園の華のひとつが元気がないと俺様としても気にかかる」
「!」
「一体何があったんだい?」
稟は一瞬樹の方を見たが直ぐに別の方向に視線をそらした。
「あー……あのさ、もし……」
「もし?」
稟はそこで言葉を切って笑っているのか困っているのか分からない表情を見せると自分の鞄を持ち上げる。
「すまん、なんでもない。 じゃあな」
言うが早いか稟は早足で教室を後にしていた。
「え? ちょ、ちょっと待ってくれよ稟!」
慌てて鞄を掴んだところでタタタタと階段を駆け降りる音が聴こえたので樹は諦めてゆっくりと歩き出した。
「まったく、稟にも困ったもんだね」



「ふぅ、樹の奴もスルどいな」
自室のベッドに鞄を投げると肩で大きく息をした。

(やっぱりこのままって訳にもいかないよな。でもなぁ……)

プルルルルル プルルルルル

稟の迷いをヨソに自室に置いてある子機が騒ぎ出す。

「はい、芙蓉……、ネリネか?」
『稟様ですか?今から……っ、家に来られませんか?』
電話に出たのは確かにネリネだ。だけど何か様子がおかしい。
「別に良いけど、どうした?風邪でも引いたのか? なんか息が荒い気が」
『いえ、そういう……訳では無いんです。いいお茶が手に入ったのでご一緒にいかがかと思い、まして』
「? まあいいか、そういう事なら着替えたら行くよ」

稟はカチャリと受話器を置くと一人ごちた。
「まあ、魔王のおじさんたちもいるだろうしそういう空気にはならないだろ」
……ジレンマってやつかな、と自笑気味に呟くと稟はいそいそと普段着に着替え始めた。

541 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/10/18(日) 21:23:52 ID:M2ATYmtw
とりあえずここまで
次回は一気に行きます

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