412 名前:335[sage] 投稿日:2007/05/14(月) 21:51:17 ID:ssujU5En
以前予告したカレハ先輩SSですが、なんとか前編が仕上がったので投下させてもらいますね
413 名前:とある秋の休日(前編) 1/12[sage] 投稿日:2007/05/14(月) 21:52:03 ID:ssujU5En
秋。
世間では、食欲・芸術・スポーツ等様々なものに最適と思われているそんな季節のとある休日に、俺は何をしているかというと、
「……なので、これは……。」
「………。」
「そして、こちらは……、あのー、稟さん?」
「は、はい、何でしょう。」
「いえ、先ほどから反応が薄いのですけど、ちゃんと分かってますか?」
「……すみません、あまり分かってません。」
俺は先輩であり、恋人でもあるカレハさんに魔法学を教えてもらっていた。
なぜ、こんなことになったかというと、事の顛末は昨日の放課後まで遡る…

「よーし、今日のホームルームはここまでだ。」
いつも通りの教室の風景に、いつも通りの紅女史のこの一言でホームルームは終わると思われたが、
「それじゃあ、追試を受ける者はちゃんと勉強をしてくること。これで、またとんでもない点数だったら今度は補習を受けるはめになるぞ。」
紅女史の一言で教室の一部から、うめき声が上がったが、当の紅女史は颯爽と教室を出て行ってしまった。
「あのー、稟くん…。」
「皆まで言わなくていいぞ、楓。」
「は、はい…。」
楓が心配そうに声を掛けてきたが、その原因に心当たりがある俺は、続く言葉を遮った。
その原因は言うまでも無いが、先ほど紅女史が言っていた追試の件である。
というのも、今回の中間試験で魔法学が赤点だった俺は、めでたく追試を受けることが決定しているので、楓が何を言おうとしていたのかは手を取るように分かる。
「というわけで楓、すまないがまた勉強を…。」
「そのことなんですが……。」
いつもなら、笑顔で引き受けてくれる楓が珍しく言葉を濁すと、いやな予感がした。
「実は麻弓ちゃんにお願いされちゃいまして…。」
「……マジで?」
「は、はい…。」
思いがけない一言で俺が硬直している間に、鞄を持った麻弓が楓目掛けて突進してきた。
「楓ー、早速図書館に行くわよ!!それじゃあ土見くん、楓は借りてくわねー!!」
「え、ま、麻弓ちゃん?そ、そんなに引っ張らないでください〜。」
抵抗も空しく楓は麻弓に連れ去られ、廊下の向こうから楓が俺に謝る声が聞こえた。
「な、なんてことだ……。それじゃあ、ネリネなら…。」
俺がそう考え、ネリネの方を振り向くや否や、
「ごめんね、稟くん。リンちゃんには私がもうお願いしちゃったの。それじゃあ、リンちゃん早く行くッス!!」
「すみません、稟様〜。」
俺が声を掛けるより先に頼まれていたらしいネリネも、シアに連れられて教室を出て行ってしまった。
「な、なんてことだ……。」
「まあ、いつもの稟の尽くされぶりからすればこれはいい薬だろうね。」
頼みの綱を失い呆然としていた俺は樹の一言で現実に連れ戻された。
414 名前:とある秋の休日(前編) 2/12[sage] 投稿日:2007/05/14(月) 21:53:58 ID:ssujU5En
「それで、結局のところ今回はどうやって乗り切るんだい?」
「どうするか……。」
正直、楓やネリネに期待できないなら自力で何とかするか、もしくは…
「なんなら、今回は特別に俺様が、」
「却下。」
「……一瞬の迷いも無しに断言したね、稟。」
「お前に頼んだら、どんな見返りを要求されるか分からないからな。」
一瞬の気の迷いで樹に頼むしかないと思ったが、やはりコイツに頼む気にはなれなかった。
「くっ、残念だよ、これを機にシアちゃん達を稟の魔の手から、この俺様が解放してあげようと思ったのに……。」
そんなことを言ってる樹を放置して、ひとまず帰宅することにした。
しかし、一人で何とかなるだろうか……。
「あれー、稟ちゃんじゃない。」
「あれ、亜沙先輩ですか。」
そんなことを考えながら、昇降口に来たら亜沙先輩と出くわした。
しかし、いつも一緒のカレハさんが見当たらない。
「稟ちゃんが一人なんて珍しいわねー。あ、もしかしてこのままカレハとらぶらぶデート?それとも、どっちかの部屋に直行?」
「残念ながら違いますよ。それに、亜沙先輩が一人ってのも珍しいですね。カレハさんはどうしたんですか?」
「カレハは今日日直だから、職員室に行ってから来るわよ。で、どうして稟ちゃんは一人なのかな〜?」
「ええ、実は……。」
カレハさんが来るのを待つ間に、俺は追試を受けるはめになったこと、楓やネリネに勉強を教えてもらおうと思ったがだめだったことを亜沙先輩に話した。
「へー、そうなんだ。それにしても、楓が稟ちゃんじゃなくて麻弓ちゃんの勉強みるなんて珍しいわねー。」
「まあ、麻弓のことですし、俺の盗撮写真あたりで楓を買収したんじゃないんですか?」
「あー、それありかも。それで、稟ちゃんはどの科目の追試を受けるの?保健体育だったりなんかしちゃったら、お姉さんが手取り足取り教えてあげちゃうわよ。」
その表情は明らかに俺をからかっているときのもので、少しはそれにのってみようと思ったものの、そんなことをする気も起きなかったので、真面目にかえすことにした。
「残念ですが、魔法学なんですよね。」
俺がそう言うや否や、亜沙先輩の表情が渋いものとなり、
「ゴメン、無理。」
「……即決ですか。」
「うん、即決。」
魔法嫌いの亜沙先輩らしい返答をされてしまった。
さて、どうすればいいことやら……。
415 名前:とある秋の休日(前編) 3/12[sage] 投稿日:2007/05/14(月) 21:54:58 ID:ssujU5En
「…ねえ、稟ちゃん。」
亜沙先輩はさっきの機嫌の悪そうな表情から一転し、不思議そうな表情で俺に聞いてきた。
「どうしたんですか、亜沙先輩。」
「どうしてカレハに頼まないの?」
「え?」
「だって稟ちゃんの上級生だし魔法学得意だし、正直、こればっかりは楓よりカレハの方がいいと思うわよ。」
……言われてみれば、亜沙先輩のいう通りだった。
それに、夏休みの課題を終わらせるときもカレハさんに手伝ってもらったんだよな。
なんで俺にはカレハさんに頼むという選択肢が思い浮かばなかったんだ?
「亜沙ちゃ〜ん、お待たせしましたわ〜。あ、稟さんも一緒でしたのね。」
そんなことを考えていたら、カレハさんが俺たちの方に駆け寄ってきたので、
「て……。」
「て?手がどうかしたのですの?」
「天の助けええええええええ!!!!」
俺はそのまま、カレハさんに抱きついてしまった。
「え、り、稟さん?急にどうしたんですの?」
「うわっ、稟ちゃん大胆ねぇ。」
わけも分からず俺に抱きつかれたカレハさんは、突然の出来事にどう対処すればいいか分からないらしく、おろおろしてしまっている。
「あ、あの稟さん?私だって人前でこんなことをされては、恥ずかしいんですのよ。」
「じゃあ、人目が無かったらいくらでもオッケーなのね。」
「あ、亜沙ちゃんもからかわないでください〜。ではなくて、稟さんも離してください〜。」
「はっ、す、すいません。つい、我を忘れてカレハさんに抱きついてしまいました。」
「それは分かりますけど、いったいどうしたんですの?」
「ええ、実は……。」
そこまで言いかけたが、ふと視線を感じたので周囲を見渡してみる。
俺たちは周囲の関心を一身に集めてしまったらしく、(おもに男子の)視線に晒されていた。
「……歩きながらにしませんか?」
「そ、そうですわね。」
俺たちはそそくさと昇降口から出て行って、歩きながらカレハさんに亜沙先輩にしたのと同じ説明をし、俺の勉強をみてくれるようにたのんでみた。
「……と、いうわけなんですが駄目ですか?」
「いえ、それくらいお安いごようですわ。」
「あ、ありがとうございます。はぁ、助かった〜。」
無事、カレハさんに承諾してもらったことで、なんとか一息つくことが出来た。
ああ、今日ばかりはいつもは小悪魔としか思えない亜沙先輩が天使のように思える。
「ちょっと稟ちゃん、今もの凄―――――くボクに失礼なこと考えなかった?」
「いえ、そんなことはありませんって。」
「ふーん、本当かなー?」
相変わらず勘のいい亜沙先輩がジト目で俺のほうを向いたが、さすがにこんなことは言えないので、ひとまずごまかすことにした。
416 名前:とある秋の休日(前編) 4/12[sage] 投稿日:2007/05/14(月) 21:55:58 ID:ssujU5En
とはいえ、これだけでは納得できなかったらしく、しばらく俺の方をじっと見ていたが、
「まあ、いいや。それよりカレハ。」
「どうしたんですの、亜沙ちゃん?」
急に真剣な表情になってカレハさんの方に向き直って言った。
「稟ちゃんに勉強教えてあげるのはいいけど、あんまり甘やかしちゃ駄目よ。」
「え、ですが……。」
「そ、そうですよ亜沙先輩。俺としても今回の追試を乗り切れれば十分なわけで……。」
「はい、稟ちゃんはシャーラーップ。いい、カレハ。稟ちゃんが今度の追試でも点数低かったら、どうなると思う?」
「何か…ありますの?」
亜沙先輩の真剣さにカレハさんが不安そうな表情になったが、亜沙先輩は話を続け、
「放課後や休日に補習を受けなきゃいけなくなっちゃうの。」
「え…。それでは、ひょっとして……。」
「うん、カレハとデートする時間が、おもいっっっっっっっっっきり減っちゃうわね。」
「!!!!」
下した容赦ない宣告に、カレハさんはこの世の終わりかと思うような表情になった。
「あ、亜沙ちゃ〜ん、私どうすればいいんですの?」
「いい、カレハ。つまり稟ちゃんが今度の追試でいい成績をだせばいいのよ。……どうすればいいか分かるわね?」
「は、はい。稟さんをビシバシ鍛えればいいんですのね?」
「正解!」
「わかりましたわ!!稟さん!!」
「は、はい。なんでしょう。」
亜沙先輩に煽られたカレハさんは、泣きそうな顔から一転して厳しそうな顔になると俺の方に向き直った。
今まで見たことも無いカレハさんの表情と迫力に、俺は思わず姿勢を正してしまった。
「明日、私の家に来てくださいね。朝から夜まで稟さんにひたすら魔法学を教えてあげますわ!!」
「わ、分かりました……。」
「それでは亜沙ちゃん、稟さん、私は明日の準備がありますので、今日はこれで失礼させてもらいますわね。」
カレハさんはそう言い残すと、自宅に向かって駆け出し、カレハさんの意外な一面に呆然としていた俺と亜沙先輩はその場に取り残されてしまった。
「うわー、カレハにもあんな一面があったのね。あんなカレハ始めて見たわ。」
「ど、どうするんですか亜沙先輩。カレハさん凄い意気込みでしたよ。」
「んー、でもカレハって根がすごい優しいでしょ?だから、稟ちゃんが考えているような、スポ根みたいなことにはならないと思うわよ。」
「そうでしょうか……。」
「もう、たまにはボクの言うことも信用してよね。」
苦笑しながら言うあたり、亜沙先輩にも絶対の自信がないらしい。
さて、どうなることやら……。
417 名前:とある秋の休日(前編) 5/12[sage] 投稿日:2007/05/14(月) 21:56:44 ID:ssujU5En
そんなわけで、俺は朝からカレハさんの家におじゃまして、勉強を教えてもらっている。
亜沙先輩のいった通り、スポ根的な展開になることは無く、カレハさんはあせることなく、丁寧におしえてくれるのだが、
「芳しくありませんわね……。」
「…すいません…。」
「どうしましょう……。」
俺の学力は正直ひどいらしく、今やった小テストの点数からは、補習の二文字しか連想できなかった。
さて、どうするか、と考えていたら
『コンコン』
「お姉ちゃーん、入ってもいいー?」
規則正しいノックの音に続いて、ツボミちゃんの声が聞こえた。
「ツボミちゃん?いいですわよ。」
カレハさんがそう言うとドアが開き、ツボミちゃんが部屋の中に入ってきた。
「ツボミちゃん、どうかしたんですの?」
「えーとね、そろそろお昼ごはんの時間だけど、どうするのかなぁって思って。」
「まぁ、もうそんな時間ですの?」
そう言われて俺とカレハさんがあわてて時計を見ると、時刻はもう12時を回っていた。
「それでは稟さん、ツボミちゃん、すぐに準備するので少し待っててくださいね。」
カレハさんはそう言って台所に行ってしまった。
「なぁ、ツボミちゃん。」
「何ですか、稟おにーさん?」
「昼食の準備っていつもカレハさんがやってるの?」
「そんなことありませんよぉ。今日はお父さんもお母さんも泊りがけで出かけちゃってていないんですよ。」
「え、そうなの。」
「はい、そうなんです。それに、あたしも今日は友達の家にお泊りに行っちゃうんで、稟おにーさん午後はお姉ちゃんと二人っきりですね。」
「なるほど……、って。」
今、ツボミちゃんすごいことをサラッと言わなかったか?
「えーと、ツボミちゃん今何て言ったっけ?」
「稟おにーさんがお姉ちゃんと二人きりって言ったんですよー。いいなあ、お姉ちゃん…。」
ツボミちゃんは羨ましそうにしているが、俺にとってはただごとではない。
この後数時間、カレハさんと二人っきりと思うと……、集中できるだろうか。
「稟さーん、ツボミちゃーん、準備ができましたわよー。」
「はーい、今行きまーす。それじゃあ稟おにーさん、レッツゴーです。」
「あ、ああ。そうだね…。」
そんな俺の苦悩を知るはずもなく、ツボミちゃんが俺の手を握って歩き出したので、俺もそれにつられて歩き出しリビングに向かっていった。
カレハさんが作ってくれた昼食は、俺の予想と違わず見事なもので、思わず食べ過ぎてしまい、午後は睡魔とも闘わなければならなくなってしまいそうだった。
418 名前:とある秋の休日(前編) 6/12[sage] 投稿日:2007/05/14(月) 21:57:45 ID:ssujU5En
「それじゃあ行ってくるね、お姉ちゃん。」
「あら、もうそんな時間ですの?」
昼食を終え一息ついたら、ツボミちゃんが友達の家に行く時間になってしまった。
「稟おにーさんも、ゆっくりしてってくださいね。」
「まあ、勉強がはかどれば、少しくらいはゆっくりできるかもしれないけどね…。」
「あはは…、そうでしたね…。」
俺が苦笑しながら答えると、ツボミちゃんも俺が今日来た理由を思い出したらしく、苦笑いしながら答えた。
「でも、今日は夕方から天気が崩れるそうですから、早めに切り上げたほうがいいと思いますよ。」
「そういえば、天気予報でそんなこと言ってたなぁ。気をつけないと。」
「早く終わらせるには、稟さんががんばるしかありませんわね。」
「……手厳しいですね、カレハさん。」
「そんなことありませんわ。それじゃあツボミちゃん、いってらっしゃいですわ。」
「はーい、いってきまーす。」
そう言って、外に出るや否やツボミちゃんは走り出してしまった。
あの小さな体に、どうやったらあれだけの体力をつけられるんだ……。
「それでは、私たちも始めますか?」
「そうですね。でも、どうすればいいことやら…。」
「それでしたら、いっそのこと基礎的なことからやり直すというのはいかがですか?そちらの方が、後々楽になるかもしれませんし。」
「…それもそうかもしれませんね。それじゃあ、午後もお願いしますね。」
「了解ですわ。」
午後の勉強は予想以上にはかどった。
多少時間はかかったものの、基礎的なことから見直し穴を埋め、解けなかった理由も明確になったので、さっきまでよりはよっぽど解けるようになった。
そのせいだろうか、午前中よりはカレハさんの笑顔も多くなってきた。
そして今は、小テストのようなものを一つ解き終え、カレハさんに採点してもらっているのだが、
「……どうでしょう…?」
「そうですわねぇ……。このくらいでしょうか。」
カレハさんが赤ペンを置き、俺に見せたくれた点数は、
「…はぁ〜、よかった…。これならなんとか補習は免れそうですよ。」
なんとか今回のテストの平均点に近いもので、ひとまず安心できるライン、といったところだった。
「稟さん、頑張りましたものね。」
「いえ、カレハさんの教え方が上手かったからですよ。」
「まあ、稟さんってばお上手ですのね。」
「いえ、そんなことは…って、ん?」
419 名前:とある秋の休日(前編) 7/12[sage] 投稿日:2007/05/14(月) 21:58:33 ID:ssujU5En
「どうかしましたの?」
「なんだか空が真っ暗に曇ってるんですが…。」
外が時間の割にやけに暗かったので、窓に近づいて空を見ると、空が黒雲で埋め尽くされていた。
「本当ですわね。」
「これは一雨来そうですね。」
「そういえば、ツボミちゃんが夕方から天気が崩れると言ってましたわね。」
カレハさんがそう言った瞬間、俺は恐ろしく嫌な予感がしたので室内を向き、
「そ、それじゃあ振り出す前に俺は『ピシャーッ!!』」
帰ります、と言い終える前に大きな雷が落ちる音がした。
まさか……、と思いつつ窓の方へ振り向くと、
「あら、雨も降り始めたようですわ。」
窓には大粒の雨が打ちつけられ、窓から見える風景は雨で覆いつくされていた。
「まいったなぁ、これじゃあ帰る前にずぶ濡れになりますよね。」
「でしたら、今日は泊まっていかれてはどうですか?」
「そうですね、カレハさんの家に泊まるしか……って、あ、あのーカレハさん?」
「はい、なんですの?」
俺は歯車が錆びたブリキ人形のようにカレハさんの方を向くと、その顔には今日一番の笑みがあった。
その表情に思わず何も言えなくなってしまいそうだったが、なんとか声を絞り出す。
「さすがに、年頃の娘さんのいる家に男を泊めるのは、どうかと思うのですが…。」
「稟さんでしたら問題ありませんわ。それに、この雨の中を帰られては風邪をひいてしまいますし。」
「そ、そうかもしれませんが……。」
「それとも、私と二人っきりは嫌なのですか…?」
「い、いえ、そんなことはありませんって!むしろ、最近カレハさんと二人っきりでゆっくりする機会が無かったので、この雨に感謝してるくらいで……。」
カレハさんの悲しそうな顔に罪悪感を引き立てられた俺は、思わず本音をこぼしてしまった。
「でしたら、問題ありませんわね。」
「……はい。」
1R35秒、俺のKO負け。
一転し嬉しそうにしているカレハさんに、俺はもう抵抗することが出来なかった。
「それでは、夕食までまだ時間があるので、もう少しできますわね。」
「そうですね。それじゃあ、始めましょうか。」
「稟さん、その意気ですわ。」
そう言って再開したまではよかったが、俺が泊まっていくことがよほど嬉しかったのか、カレハさんは終始笑顔のままだった。
そうなると、俺も多少気が緩んでしまいペースが少し落ちてしまった。
まあ、もう一日あるからいいが、明日もこの調子だったら間に合うだろうか……。
420 名前:とある秋の休日(前編) 8/12[sage] 投稿日:2007/05/14(月) 21:59:22 ID:ssujU5En
「はあ、今日は疲れたなぁ。」
俺は湯船に浸かりながらそう感じていた。
もちろん疲れたのは頭であって、身体の方ではない。
……まあ、カレハさんと二人っきりだったので、身体の方が疲れることを期待していなかったと言えば嘘になるが、残念ながらそんなことにはならなかった。
「それにしても、なんでカレハさんは俺が先に風呂に入るのを勧めたんだ?」
夕飯を食べてからまた勉強し、寝る前に風呂に入るということになると、何故かカレハさんは俺に先に入ることを勧めてきた。
客である俺としては、カレハさんに一番風呂を譲ったのだが、何故かカレハさんが遠慮して俺に先に入るよう勧めてきたので、こうして先に入らせて貰ってるわけだが、その理由がわからず、ぼーっとしてたら、
「稟さーん、湯加減の方はいかがですか?」
「!は、はい、ちょうどいいです…。」
急にカレハさんに声をかけられ、うわずった返事をしてしまった。
「よかったですわ。それでは、私もご一緒させていただきますね。」
「…え?」
なんだかとんでもない一言が聞こえたので、思わず浴室の入り口の方を向くと、ちょうどタオル一枚で身体を隠したカレハさんが入ってきた。
カレハさんとはもう何回か身体を重ねたことがあるので、これが初めてというわけではないが、悲しいかな、男の性として魅入ってしまった。
「あのう、じっと見られていては私も恥ずかしいのですが…。」
「し、失礼しました。」
カレハさんの一言で目は逸らしたものの、やはり横目でちらりとカレハさんの身体を見てしまうのも、男の悲しい性だろう。
「では、失礼しますね。」
「は、はい、どうぞ…。」
カレハさんが浴槽に入ろうとしたので、俺は身体を反対側まで寄せたのだが、少し狭かったらしく身体が密着してしまい、カレハさんの胸が上腕に押し付けられている。
「少し狭いですけど、気持いいですわね。」
「そ、そうですね……。」
そんな、状況なので俺としてはとてもカレハさんの方を向くことなどできず、少しでも反応しないよう鎮めるので精一杯だった。
「そういえば、稟さんはもう身体を洗ってしまいましたか?」
「い、いえ、まだですが。」
「まあ、よかったですわ。では、私が背中を流してさしあげますわね。」
「え、そ、それはさすがに……。」
「遠慮しなくてもいいんですのよ。それでは、こちらに座ってくださいね。」
少しは抵抗しようとしたものの、甘い誘惑には抗えずカレハさんに背中を流してもらうことになった。
「稟さんはこれくらいでよろしいでしょうか?」
「ええ、このくらいで…。それにしても、カレハさん随分と慣れてるみていですね。」
「はい、いつもツボミちゃんと背中の流しっこをしてるので、私得意なんですのよ。」
そういうだけあって、カレハさんは絶妙な力加減で俺の背中を洗っていく。
いつもこれをして貰っているツボミちゃんが羨ましいな、などと考えていたら、
「はい、終わりましたのよ。」
洗い終わったらしく、背中を動いていたカレハさんの手の動きが止まった。
421 名前:とある秋の休日(前編) 9/12[sage] 投稿日:2007/05/14(月) 22:00:13 ID:ssujU5En
「それでは、今度は稟さんが私の背中を流してくださいませね。」
「あ、はい、分かりました。」
少し名残惜しい気もしたが、今度は俺がカレハさんの背中を流すべく身体ごと後ろに向けたら、カレハさんがすでに俺に背中を向けて待っていた。
いつもは後ろに流されているカレハさんの髪が肩から前に垂らされており、普段は見えないカレハさんのうなじが見え、俺の欲情が刺激された。
とはいえ、そのまま欲情に身を任せてはならないと思った俺は、欲情を押さえつけカレハさんの背中を流すことにした。
「力加減はこれくらいでいいですか?」
「はい、丁度ですわ。」
そのまま、カレハさんの背中を流していたら、
「そういえば、稟さんはご存知ですか?」
急に声をかけられた。
「え、何をですか?」
「そ、その……。」
言うのが恥ずかしいのか、カレハさんはしばらくモジモジしていたが、ゆっくりと言葉を続ける。
「その……、女の子にも…、性欲はあるんですのよ…。」
最後の方は声が小さくなっていっていったが、なんとか聞き取ることができた。
カレハさんがそんなことを言うってことは……。
「そ、それって、つまり……。」
「き、きっと稟さんが考えているとおりだと思いますわ……、きゃあっ。」
カレハさんのその一言を聞くなり欲情を押さえられなくなった俺は、思わずカレハさんに抱きしめてしまった。
「…そんなこと言われたら、俺もう我慢できませんよ。」
「我慢しなくてもいいんですのよ…。」
そう言って振り向いたカレハさんの唇に、俺は自分の唇を重ねる。
「ん…。」
俺たちはそのまま舌を伸ばし、どちらともなく絡め始める。
初めはその程度だったが、その内舌の動きが激しくなり、カレハさんの舌が俺の口の中に侵入してきた。
「ん…、はぁ……んちゅ…。」
俺も負けじとカレハさんの口に舌を侵入させるとともに、空いていた両手をカレハさんの胸に伸ばす。
特別大きいというわけではないが、柔らかく弾力もあるカレハさんの胸は、俺の思い通りにその形を変える。
「やっぱりカレハさんの胸、柔らかいですね。病み付きになりそうですよ。」
「ん…私も、気持いですわ…。」
「それじゃあ、もっと気持ちよくさせてあげますね。」
俺は手にこめる力を少し強くするとともに、乳首を軽く摘み上げる。
「ひゃう……。」
急に乳首に刺激を加えられたカレハさんの口から嬌声がもれる。
初めは柔らかかった乳首も、暫くすると固くなってきた。
「カレハさん、だんだん感じてきてますね。乳首がこんなに固くなってますよ。」
「は、恥ずかしいので…んんっ…言わないでください……。」
「恥ずかしくなんてありませんよ。むしろ、俺としては嬉しいくらいですし。」
422 名前:とある秋の休日(前編) 10/12[sage] 投稿日:2007/05/14(月) 22:00:58 ID:ssujU5En
羞恥に染まったカレハさんの抗議を軽く聞き流してから、片手をカレハさんの秘所に伸ばす。
そこはまだ湿ってるていどだったが、指を入れて軽く刺激を加えるとすぐに蜜があふれ始めた。
「ひゃああんっ…そこは……。」
「だめですか?」
「そ、そんなことは……んんっ…ありませんが…。」
「それじゃあ、続けますね。」
そのまま続けると、奥から蜜が溢れつづけ、いやらしい音が響き始める。
「カレハさん、すごい感じてるんですね。下がもう大洪水ですよ。」
「はあぁ…は、恥ずかしいですわ…。」
そんなカレハさんの抗議の声を聞き流しつつ、俺はカレハさんの秘所を弄る指の動きを激しくした。
「どうですか、カレハさん。こんなにいやらしい音がしてますよ。」
俺はわざと音が大きくなるようにして、カレハさんに囁きかける。
「あぁっ、そ、そんなに音…んふっ……、出さないでください……。」
とはいえ、カレハさんの秘所からは止まることなく蜜が溢れてくるので、音は大きくなる一方で、小さくなる気配はなかった。
いつの間にかカレハさんは俺に寄りかかっており、俺がカレハさんに快感を与え続けるだけの状態となっていた。
しばらくそんな状態が続いたが、やがてカレハさんが、
「はぁ、り、稟さん…、私もう……。」
と言ってきた。
どうやら、もう限界らしい。
「分かりました。それじゃあ、一気に気持ちよくしますね。」
俺はそう言って、まだ一度も触れていなかったクリトリスを軽く撫で始める。
「ひゃん……、はあ…ああっ……んんっ……。」
少しずつ高くなっていく嬌声は、カレハさんが少しずつ限界に近づいていることを俺に教えてくれる。
「だ、ダメです…、私…ああっ…これいじょ…ひゃあっ……耐えられませ…んんっ。」
散々刺激を強くした後、クリトリスを摘み上げると同時に、カレハさんの耳を甘噛みすると、
「んあっ!あ、あ、ああああぁぁぁぁぁっ……!!」
ひときわ大きな嬌声と共にカレハさんは身体を反らした。
「だ、大丈夫ですか?」
「へ、平気ですわ……。ですけど…。」
「どうかしましたか?」
「稟さんは…まだ気持ちよくなってませんわよね。」
カレハさんはそう言うと、俺のモノに手を伸ばし軽く握り締めてきた。
「やっぱり……大きいままですわね……。」
「そ、それじゃあそろそろこっちで……。」
俺が濡れたままのカレハさんの秘所を軽く弄りながら聞くと
「いいですわよ。こんどは稟さんも気持ちよくなってくださいね……。」
カレハさんは笑顔でそう答えてくれた。
423 名前:とある秋の休日(前編) 11/12[sage] 投稿日:2007/05/14(月) 22:01:48 ID:ssujU5En
「それじゃあ、今度はこれで……。」
俺はカレハさんを立たせ、浴槽に手をつけてもらい、俺はその後ろに立った。
「あ、あの、稟さん…この体勢はとても恥ずかしいのですが……本当にこのまま?」
俺から丸見えのこの体位にはやはり抵抗があるらしく、カレハさんは恥ずかしそうに俺に聞いてくる。
「ですけど、ベッドの上ならともかく、ここでできるのは限られてるからしかたありませんよ。」
「そ、それはそうですけど…。」
「それに、こんなにきれいなんですから、恥ずかしがる必要なんてありませんよ。」
俺はカレハさんの入り口に指を入れ、広げてその中を覗き込んでみた。
カレハさんの膣内は相変わらずきれいなピンク色を保っており、いやらしく光る蜜は俺の欲情を刺激する。
「あ、あまりじっくり見ないでくださいませね…。」
「分かりました。それじゃあ…。」
俺はカレハさんの秘所から顔を離すと、かわりに固くなった俺のモノを入り口にあてがった。
「入れていいですよね?」
「は、はい……。」
カレハさんの同意も得られたところで、俺は挿入を開始した。
「あんっ…、り、稟さんが入ってきますわ…。」
「や、やっぱりいつ入れてもカレハさんの膣きついですね……。」
もう何度目の挿入かは分からないものの、カレハさんの膣は相変わらず、初めてのときと同じ強さで俺のモノを締め付けてくる。
「そろそろ動きますよ…。」
「ど、どうぞ、稟さんのお好きなようになさってください……。」
「それじゃあ、お言葉に甘えて……。」
俺は軽くモノを抜いてゆっくりと注挿を始める。
その度に、カレハさんの膣内のヒダが絡みつき、なんともいえない快感を与えてくる。
「はあっ…、り、稟さんが私の中で動いてますわ……。」
感じ始めたカレハさんの声はより艶っぽくなる。
俺は少しずつ注挿の速度を上げたが、それに比して与えられる快感も強くなってくるのが分かる。
「り、稟さんも…ああっ…気持いですか……。」
「も、もちろんですよ……。」
速度もある程度上がってきたので、俺はカレハさんの腰にあてていた手を胸へと伸ばすことにした。
「ひゃうん…り、稟さん……同時に…されては…はあっ……私……。」
口では抵抗していたものの感じているらしく、やがてカレハさんも腰を前後に動かし始めた。
その予想外の快感に、射精感がいっきにこみ上げてきた。
「カ、カレハさん…気持ちよすぎて……もう出そうです…。」
「わ、私も…もう……。」
どうやら、俺もカレハさんもそろそろ限界らしい。
俺はもう一度両手でカレハさんの腰を掴んで、注挿の速度をいっきにあげる。
424 名前:とある秋の休日(前編) 12/12[sage] 投稿日:2007/05/14(月) 22:02:44 ID:ssujU5En
「はああっ……、稟さんのが…お、奥に当たって…んっ…私…もう……。」
「カ、カレハさん…俺もう…。」
もう耐えられそうにない俺は、ぎりぎりまで引き抜いてから一気に突き入れると、
「出ますっ!」
「あっ、あああっ、あああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
カレハさんの奥に届いた瞬間に俺はカレハさんの膣に注ぎ込み、同時にイってしまったカレハさんも身体を大きく反らしたかとおもうと、俺のモノが入ったまま座り込んでしまいそうになった。
「っと……カレハさん大丈夫ですか?」
「はあっ…す、すみません……力がはいらないので……。」
「わかりました。それじゃあ……。」
もう少し入れたままでいたかったのだが、それではカレハさんに悪いので、もう一回続けたくなった欲望を抑えて引き抜こうとすると、
「あ…、もう抜いてしまうんですの…?」
「ええ、カレハさん立ってるのも辛そうなんで。」
「も、申し訳ありませんわ…。」
カレハさんが残念そうな表情を浮かべたものの、やはり辛そうだったので引き抜いてから
ゆっくりとカレハさんの腰を下ろすことにした。
その間にも、俺の放出したものがゆっくりと零れてきた。
「稟さん……こんなに出したんですのね…。」
カレハさんの秘所から零れてきた量は、明らかにいつもよりも多かった。
「す、すみません。随分と溜まってたみたいで……。」
「くすっ、謝る必要なんてありませんのに…。」
恥ずかしくなって顔を紅くしてしまった俺を見ると、カレハさんはいつもの笑顔を浮かべた。
カレハさん、やっぱりその笑顔は反則です。
俺はそのまま、カレハさんを抱きしめてしまった。

それから、俺たちはゆっくりと風呂にはいってから寝ることにしたのだが、
「あのー、カレハさん?」
「はい、どうかなさいましたか?」
「どうして、同じベッドで寝てるのでしょうか?」
何故か俺たちは同じベッドで寝ていた。
しかも、カレハさんが俺の腕に抱きついているのだから、逃げようが無い。
「私が稟さんと眠りたいから、という理由では駄目でしょうか?」
「いえ、問題ありません。」
「でしたら、問題ありませんわね。」
そう言うと、カレハさんは笑顔のまま俺の腕をより強く抱きついてきた。
「それでは、おやすみなさいませね。」
「……おやすみなさい。」
そんな俺の苦労?はお構い無しに、カレハさんはそのまま目を瞑ってしまった。
すると、数分後にはもう穏やかな寝息が聞こえてきた。
こんな状況で寝れるのかと疑問だったが、今日一日でかなり疲れていたらしく、目を瞑っていたらやがて睡魔が襲ってきた。
ああ、よかった……、これで寝れ…る……。
425 名前:335[sage] 投稿日:2007/05/14(月) 22:05:17 ID:ssujU5En
とりあえず前編はここで終了です
満足してもらえるかどうかは分かりませんが、少しでも楽しんでもらえれば幸いです
後編の投下時期は未定なので気長にお待ちください
それでは、今回はこのへんで

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